社会問題に立ち向かう!飛騨高山の「さるぼぼコイン」が目指すデジタル地域通貨の未来。Chapter.2

特集・コラム

Chapter.1の続きで、デジタル地域通貨について株式会社フィノバレー様川田氏のインタビューとなります!

株式会社フィノバレー
代表取締役 川田 修平氏
プライスウォーターハウスコンサルタントでERPシステムのコンサルタント、ボストン・コンサルティング・グループで戦略コンサルタントとしてプロジェクトを推進。
GEコンシュマーファイナンスで保険事業を担当した後、エス・エム・エスで看護師などの医療従事者向けコミュニティサイトの運営、看護師向け雑誌、通販事業の買収・PMIから運営・推進を担当。
その後、株式会社アイリッジにて、営業と新規事業開発を担当し、FinTech、決済領域でのプロジェクトを推進。
2018年8月よりデジタル地域通貨を中心としたFinTech事業を子会社化し、代表取締役社長に就任。
少子高齢化や地域活性化をテーマに、金融とIT(特にスマートフォンアプリ)を使ったソリューションの開発、推進中。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。


導入までのハードルや課題

前回のご質問を改めて。
導入するにあたり、システム開発をされた御社、運用をされているひだしん様、決済システムを導入する店舗様、そして利用するエンドユーザー様と、ステークホルダーが多く、実現までにさまざまなハードルを越えてこられたのではないかと思います。

導入に伴う課題や経験談などをお聞かせください。

川田氏 地域通貨の話すると、「ダメ」という人はいなくて総論、「いいね!」という人がほとんどです。

ただ、実際に動かすとなると少し話が違います。

誰がやるのか、誰が費用をだすのか。
ほっといて誰かが使ってくれるわけではないので、店舗様へ導入の営業を行ったり、エンドユーザーに参加してもらうという工夫も必要になります。
これだけのことを、いざ誰がやるとなると、意思決定をするのは簡単なことではありません。

なので、導入の手前の決断をするというフェーズが一番難しいところかなと思います。

誰かパトロンとなる資産を持っている人が一人いればできる訳でもなく、地域で広めていくには地域での信頼が必要になります。

例えば、私たちは普段お札で買い物をしています。
しかし、これは1万円札を信用している訳ではありません。
「日本という国に対しての信用」があって、1万円として使用できることを暗黙的に理解しているから価値を感じている訳です。
お札の紙の原価なんて微々たるものですからね。

つまり、デジタル通貨のアプリやシステムを開発している弊社ではなく、信頼されている団体が運営しないと参加者も集まりません。

そういう意味では弊社ではなく地元の金融機関や自治体が運営することで、そこへの信頼を得ることができます。

これがとても大事なので、導入前のこの部分が上手くいかないと、弊社でもお断りせざるを得ないケースがあります。

導入のメリット

なるほど。技術だけではなく信頼が大事なんですね。

でも、導入する店舗様や利用するエンドユーザー様は、なにかしらのメリットがないと利用に至らない気がするのですが、どのようにメリットを出していくのでしょうか?

川田氏 色々なパターンがありますが、店舗様でのメリットはクレジットカードより手数料が安いです。

クレジットカードだと、ネットでの契約だと3%~4%程度、営業担当者との契約だと小規模な店ではスケールメリットでのディスカウント等の交渉も弱く、5%程度までいく事もあります。
店舗様では利益から家賃や光熱費等の経費を引くと粗利がかなり低くなるので、売り上げの5%はかなりきつい出費といえます。

また、情調的な話になりますが、地域を盛り上げようという取り組みに対して賛同してくださる店舗様もいらっしゃるのが、導入してくださる一つの理由になります。

郷土愛が存在するわけですね。
都内近辺に住んでいるとイメージしづらい感情かもしれません。

川田氏 そうですね。たしかに薄れてはいますが、その地域に根差している方は強いです。
たしかに、東京にいると郷土愛というイメージが湧きづらいかもしれません。
でも、東京と地方で人口が何倍も違うという訳ではないので、決して地方がマイノリティという訳ではないんです。
東京とは別の知らない世界あるというイメージです。

グローバル・ローカル議論

川田氏 少し前にグローバル・ローカルという議論がありました。

例えば、大学でいうと世界と競っていくグローバルな大学と、地元での教育を担っている大学では趣旨が違い、両方とも必要な訳です。
地域でいえば、東京のような世界の都市と競っていく地域と、地方といわれる地域はそれぞれ存在意義が違います。
それぞれが違うマーケットなので、東京のルールを地方に持っていくと全然うまくいかないことがあります。

なるほど。
根本的な違いを踏まえて考えないといけないのですね。
川田様ご自身も直接現地に行かれることもありますか?

川田氏 はい。お問い合わせ頂ければ可能な限り直接お伺いするようにしています。
まずは知って頂くことが大事であり、私たちも肌で感じないといけないと考えています。
東京や都市圏だけでマーケティングやっている方は、きっと大きな違いを感じることも多いと思います。

端的な事例ですが、税金などバーコードで支払いができる収納用紙ってありますよね。
役所や銀行に行かずにコンビニなどで深夜にも支払いができるので、とても便利だと思います。
しかし、地方ではコンビニまで車で30分という地域もあるので利便性が高い訳ではないんです。
そこで地域通貨のアプリで支払いができるのは、とても利便性が良くエンドユーザーとしてはメリットになります。

たしかに。。。
東京にいると気づかない点ですね。

川田氏 地方のスーパーなど色々な店舗、そして郵便局ですら統廃合されるので、買い物難民も出てくる状況です。
都会・都心に引っ越せば良いと思うかもしれませんが、そんな簡単な話ではありません。
生まれ育った土地でもありますしね。
そのような中で都市と地方をどのように両立させていくか、というのは社会や国として考えていく必要のある問題ととらえています。

そうですね。生活基盤や水準が変わるので気軽に引っ越しという訳にはいかなそうです。

高齢者はアプリを使うのか?

次のご質問となりますが、さるほぼコインはICカードではなくアプリとしてリリースをされていますが、高齢者の使用率はいかがでしょうか?

川田氏 後期高齢者で80代となると少ないですが、スマートフォン(以後、スマホ)を60代の方はほとんど持っていますし、70代の方も持っている方が多いです。
ICカードやFeliCaを中心としたカードや機械を作るとシステム費用が10倍以上になります。
開発費用が限られる中での最善策としては、スマホの使い方を覚えて頂く方が圧倒的にコストが安くなります。

たしかに、高齢者の方でもPCは苦手だけどスマホは使える方は多いですね。

川田氏 はい。それにその子供たちはスマホアプリの使い方はすぐに分かるので、高齢者の方は周りに聞けば大体使い方が分かります。
ただし、自分の息子・娘に聞くとケンカになるという社会問題(!?)もあるので、優しい先生に丁寧に教しえてもらわないといけないですけどね(笑)。

その問題は切実です(笑)
ただ、息子・娘の世代だとPCなども仕事で日常的に使いますしアプリの導入というのはハードルが低いのかもしれませんね。

川田氏 そこにも、都市と地方の違いがあるんですよ。
いわゆるオフィスワークでPCを使う仕事の比率が違うんです。
農業の仕事をしている方は基本的には、日常的にPCを使うわけではありません。

都市と地方の見えている世界が違う一面ですね。
地域の特性を見抜いて事業を行っていく事が成功するカギとなります。

個人間送金機能の可能性

あ、そうですね。。気づきませんでした・・・。
地域の特性をしっかり押さえておくことはとても重要なんですね。

ちなみに、こちらのアプリは個人間の送金機能も搭載していますよね?
現在、日本ではまだ個人間送金というサービスが普及していないような気がしますが、導入した理由などはなにかあるのでしょうか。

川田氏 はい。地元の金融機関様と紐づけている方は送金ができるようになっています。
PayPayやLINE Payでは個人間送金ができますが、日本ではそこまでニーズが顕在化していないですね。

アメリカの個人間送金アプリ「Venmo」

元々はアメリカでVenmo(ベンモ)という個人間送金のアプリ(サービス)が流行りました。
海外では、日本と違って銀行口座というのが簡単に開けません。
そのため送金ができないので、小切手の文化がいまだに残っています。
その文化との親和性が良く成功しているという背景があります。

ただし、法律的にはマネーロンダリング等で悪用される可能性もあるので、本人確認(アウトサイダーではない証明)が必要になりますけどね。

そこにインスパイアされて、日本でも導入しているキャッシュレス決済のサービスがありますが、まだそこまでブレイクしていない状況です。
東南アジアの地域では銀行口座の保有率が20%程度という地域もあります。
いわゆる「アンバンクド」と呼ばれる銀行口座を持たない人が多い地域と、金融インフラが整っている日本では、環境が大きく違うのでそういった分野でのイノベーションが起きにくい要素があります。

加盟店間のBtoB送金に注目

私たちの地域通貨では、個人間送金も大事ですが、BtoBの加盟店間の送金ができるという点を大事にしています。
店舗がお客様より受け取ったコイン(地域通貨)を、仕入れの支払いとして使用できる二次・三次流通として使用される利用方法に注目しています。
そうすることで地域内の流通で地域通貨を循環することができるので、地域の経済の活性化につながる訳です。

デジタル地域通貨の未来

海外の事例を考えると日本は恵まれている国だと思います。
しかし、それゆえの弊害もあるということですね。

最後に。今後、デジタル地域通貨・そのプラットフォームはどのような方向に進んでいくのでしょうか?

川田氏 お金って、商品を買う時の意味だけではなく、貯蓄・投資という意味のお金もあります。

今後、寄付・クラウドファンディング・証券トークンという投資系の領域にも機能を増やしていきたいと考えています。
というのは、金融資産は地方ではここ20年くらいは増えていくと予測されています。
その金融資産をどう活用するかというと、間接金融ではなかなか循環しません。
ニワトリとたまごのような話ですが、地元に良い産業が生み出されないとお金がまわりませんし、お金がまわることで良い産業が生み出されるかもしれません。

例えば、私が地元で生まれ育った70代だとして、死ぬと国庫で相続税を納めて子供が東京にいると東京にお金が流れていきます。
地元への想いがある方は、一部でも地元の地域のために循環させたいという気持ちを持っている方もいると思います。
しかし、現在はその受け皿(ツール)がないので、それを提供できる仕組みに育てていきたいです。

また、 こちらも あくまでも例ですが、例えば風力発電所を、1口1000円ずつ募って建てるとします。
そして発電した電気を配当で渡したり、自分が出資した1000円という愛着がわき、地元への愛着につながると考えています。
そういった地域に対する愛情が高まり、シビックプライドと呼ばれる領域でエンゲージメントが高まることで、色々なことが生まれる可能性を一つの方向性として目指しています。

また、地域の方の多くの割合の方がこのアプリを持っていると、情報インフラとしての価値が出てくるので、災害情報の配信や市の広報配信を行うこともできます。
スマホは情報配信としてのアウトプットの側面とアンケートをとるインプットする側面の双方向型のメディアであり、センサーでもあるという特性も持ち合わせています。
もちろん、使用者の許諾を得る必要がありますが、色々な情報を取得して活用することができます。

最近では、スマートシティなどIoTつなげた世界観の重要なコアとなるインフラとして、地域通貨が成り立つ可能性を秘めています。

地域のプラットフォームになる可能性を秘めているんですね。

川田氏 はい。
例えば、マイナンバーなどと紐づければ、本人確認が必要な行政の申請なども不要になることで、行政の効率化等につながります。

さらに、大上段の話をするとMMT(現代貨幣理論)とかヘリコプターマネーといわれている理論や施策で、日本銀行がお金をどんどん刷っていますが、流動せずにどこかで滞留している為、経済格差が広がっています。

例えば、国の給付金等の政策が施行される場合、お金をアプリへ直接入金すれば、お金の滞留を避けることができますし、これまでと違う金融政策を検討できます。
今後、ベーシックインカムのような議論が出るときに、地域を限定した社会実験的なことができる可能性を秘めています。

キャッシュレス決済というのは、あくまでもワンノブゼム(One of Them)で、もっと今後発展できる可能性を信じています。

ありがとうございます。
デジタル地域通貨は、キャッシュレス決済だけでなくとても大きな可能性を持っているんですね!
「地域×IT」による地域活性化に、今後、より注目が集まっていくかもしれません。

FinTech事業が、この先どのような未来を描くのかとても楽しみです。


インタビューご協力企業様のご紹介

今回インタビューにご協力いただいた企業様「株式会社フィノバレー」様はマザーズに上場している株式会社アイリッジ様の子会社となります。
電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」は、今回ご紹介させて頂いた「さるぼぼコイン」だけでなく、木更津市限定の「アクアコイン」でも利用されています。