【特集】SNSの闇にせまる第二弾!「ひととき融資」の実態

特集・コラム

教授、今回もかなり切り込んでますね。。

はい、前回の私人間融資の記事に続き、今回もSNSの闇についての調査をお話ししたいと思います。
一つの事例として今回は執筆していますが、性犯罪に関わるケースなので、気分を害される方は読み進めないようご注意ください。

「ひととき融資」とは?

皆さん、「ひととき融資」という金融商品をご存知ですか?

これはネット上で散見される犯罪行為で、主に「女性との性交渉を目的」とするヤミ金融です。
違法な高金利で金を貸し付けるだけではなく、お金の必要な女性の弱みにつけ込んで肉体関係を求める行為です。

従来からのヤミ金融は、高利貸し付けで経済的な利益を追求することを目的としています。
しかし「ひととき融資」の資金供与者は、金利の収奪以上に女性との性交渉を目的として、個人間融資を装いながら性犯罪を伴うヤミ金融として暗躍しています。

ひととき融資の実例

「ひととき融資」をヤミ金融として摘発された最初の事件は、2019年6月5日に報道されました。

当時の新聞記事[1]によると、公務員(大阪・千早赤阪村職員)の男性容疑者(36歳)がインターネット上で資金繰りに困っている女性を見つけ、性行為を条件にお金を貸す行為を繰り返してました。

今回の逮捕容疑は2016年8月~2019年2月の期間に、20代と40代の女性2人に計26万円を融資しています。
法定金利を約2~7倍上回る計80万9,400円の利息を受け取っています。

これは出資法及び貸金業法の違反行為です。

この容疑者が「ひととき融資」を始めた時期は2012年頃。
女性を見つける手段はネット掲示板でした。
つまり、この容疑者は7年間もネットの世界に潜り「ひととき融資」というヤミ金融を繰り返してきたことになります。

なお、この容疑者は「多くの女性と肉体関係を持てる素晴らしい融資」と供述しているそうです。

この事件はヤミ金融として被害金額は少ないものの、犯罪目的の陰湿性から様々な報道媒体で広く伝えられました。
ネット上の個人間融資という警察にとって摘発の難しい犯罪であるだけでなく、ヤミ金融である資金供与者と資金需要者である女性との間の性的関係が「任意」でないことを立証する必要性があります。
また、女性が警察に被害届を出しづらい心理的な弱みに付け込んでいる点から陰湿性の高さがうかがえます。

そして、さらに「ひととき融資」の派生型とも言える陰湿なヤミ金融が2019年11月28日に摘発されました。

報道[2]によると、40歳の男性自衛官(山口・見島分屯基地所属)がお金に困った大阪や九州の女性4人に対し、無登録で合わせて9万円を貸し付け、法定金利を大幅に超える利息を受け取った容疑で逮捕されました。

そして、今回の事件は融資を誘った女性に対して「担保として下着の写真を送る」ことを条件としていました。
自分の下着写真を「人質」として取られた女性被害者は、先の「ひととき融資」と同様に警察に被害届を出すことへの躊躇いは大きく、とても陰湿性が高いといえるでしょう。

また、この容疑者は2017年頃から同様の手口でヤミ金融を始め、110人に合計1,100万円以上を貸し付けていたとされています。
資金需要者である女性の探索先は、こちらもネットの掲示板でした。


[1] 「性行為の見返りにヤミ融資『ひととき融資』容疑 大阪・千早赤阪村職員を逮捕」毎日新聞(2019/6/5)

[2] 「女性勧誘しヤミ金 自衛官逮捕、“担保”で下着写真を要求か」TBS NEWS(2019/11/28)

事件の共通点

この2つのヤミ金融事件。
3つの共通点があります。

1.犯罪の陰湿性

両者とも被害者の女性が「ヤミ金融の被害を心理的に出せない状況に追い込んだ上で貸し付ける」という悪意に満ちた手法であるといえます。

2.融資先の見つけ方

2つの犯罪とも異常な性的嗜好性をもった容疑者が、お金に困っている女性をP2Pレンディングの掲示板から融資先を見つけている点です。

野村證券P2Pレンディング | 証券用語解説集」


実際にネット上で「個人間融資」「掲示板」というキーワードで検索すると、クラウドファンディング紛いの掲示板が散見されます。
つまり、こうした個人間融資の掲示板を通して、融資対象となる「自分好みの女性」を物色していると推測されます。
特に、大阪府の千早赤阪村職員による「ひととき融資」の事件では、融資相手の選別基準は本人の返済力ではなく、自分の性的好みとの合致度であったのだろうと推測されます。

従来からの経済的利益を追求するヤミ金融とは異なり、「ひととき融資」の容疑者は自らの性的欲求を満たすための手段として、個人間融資を利用しているとも考えられます。

そして「ひととき融資」に代表される「自らの性的欲求を満たすことを目的としたヤミ金融」と「従来からの高利貸し付けで経済的利益を追求するヤミ金融」。
同じネット上で暗躍しながらも、資金需要者にアクセスする手段が異なっている可能性があります。

つまり、前者のヤミ金融は自分の好みとなる女性を主たる融資先として選好するのに対して、後者のヤミ金融は経済的利益を達成するために返済能力の高い資金需要者を融資対象とします。

前回の記事で、2019年に私のゼミに所属する学生グループによる個人間融資に関する卒業研究の成果を紹介していました。
前回の号で解説した調査方法は、ネット掲示板に情報を入れて待つという受動的な手法ではなく、ツイッターを使ってヤミ金融と積極的にアプローチする能動的な手法をとっていました。

前回の号で取り上げた調査で対象としたヤミ金融はその立場が受動的でした。
ヤミ金融側は貸し倒れを避けるため「審査に必要な情報」として資金需要者から詳細な情報を入手します。
下記は実際にヤミ金融側が求めてきた審査情報の項目です。

実際に送られてきた内容(全項目)

  • 名前
  • 年齢
  • 年月日
  • 持ち家or賃貸
  • お住まいの都道府県
  • 職業
  • 現在の借入金額
  • 借入件数と借入先金融機関名
  • 希望融資額
  • 滞納の有無
  • 自己破産、債務整理の有無
  • 直近6ヶ月の申し込みの有無

さらに、上記調査を行ったゼミの学生グループの調査によると「ひととき融資」の動き方とは正反対の事象も見出されました。

くわしくは前回の記事で解説していますが、まずツイッターで資金需要を匂わせる文言を認めた上で、年齢・性別・資金使途も併せて記載して資金供与者(ヤミ金融業者)を募りました。

応募率を資金需要者の属性別に比較すると、女性よりも男性の方への応答が高かったです。
統計的に細かく調査したものではないですが、ツイッター上では若い女性による資金需要への応答率は極めて低かったです。

極端な例ですが、
「女子高校生(17歳)、必要額は5万円、資金使途は携帯代」
として、ツイッターで掲載したところ資金供与者は現れませんでした。
逆に相手から安易な借入れをたしなめる応答までありました。

大まかな傾向として、ヤミ金融と思われる資金供与者から返信があったパターンと、無視されたパターンの代表例は下記の通りです。

返信があった代表的パターン
①30代 男性 30万円 遊興費
②50代 男性 50万円 事業費

無視された代表的パターン
③20代 男性 20万円 学費
④30代 女性 30万円 生活費の補填

返信あるも断られたパターン
⑤17歳 女性 5万円 携帯代
※ヤミ金融側から安易に借金しないようにたしなめられる

さらなる調査は必要ですが、暗躍する個人間融資には「高利貸付で経済的利益を追求するヤミ金融」と「女性との性交渉を目的とするヤミ金融」が混在している状況が考えられます。
両者はネット上の異なるルートで、それぞれの目的に適った資金需要者にアクセス(営業)している可能性が示唆されました。

「ひととき融資」は、ヤミ金融業者側がP2Pレンディングの掲示板から対象となる女性を物色して、お金に困った女性にアクセスしている可能性が考えられます。
被害をなくすため、こうした悪質なP2Pレンディングへアクセスしないように心掛けましょう。
学校教育の場での啓蒙活動も有効といえますね。

次号では上記2つのヤミ金融事件における最後3つ目の共通点を解説したいとおもいます。

ヒントは、

「改正貸金業法が格差の固定化を助長した」

です。
法律と経済の関係性について解説します。

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