【特集】SNSの闇にせまる第三弾!貸金業法改正とひととき融資の関係とは?

特集・コラム

前回の特集で「ひととき融資」の三つの特徴と、そしてそのうちの二つの特徴の詳細について教えていただきました。

前回お伝えした「ひととき融資」の特徴は、
①犯罪の陰湿性。
被害者となる女性がヤミ金融の被害を心理的に出せない状況に追い込んだ上で貸し付ける悪意に満ちた手法である点。
②異常な性的思考性を持った容疑者が、お金に困っている女性をP2Pレンディングの掲示板から融資先として見つけている点。
この二つでしたね。

その二つの特徴だけでひどい話だなぁって思いました。。。
先生、三つ目の特徴ってなんですか?

三つ目の特徴は、「ひととき融資」の貸し手は【安定した職に就いている】という点です!

え!?そんな人たちが「ひととき融資」を行ってるんですか!?

前回の記事で紹介した事件を見てみると、
①2019年6月5日に報道された事件の貸し手:地方公務員
②2019年11月28日に摘発された事件の貸し手:自衛官
でした。
つまり、貸し手は公務員という【安定した職業に就いている】立場で、借り手は女性ということが共通点です。

公務員ってすごく信用があるイメージなのに。。。

金融における信用力という観点で、公務員は最強の職種です。
逆に、女性は一般的に信用力を低くみられる傾向があるんです。
両者の属性には信用格差があり、その溝は過去10年間において拡大傾向にありました。

なんで、信用格差って広がっちゃったんでしょう。。。

2019年11月2日にNHK「おはよう日本」が「広がる“個人間融資” その実態とは」というテーマの内容を放映しました。
私もその番組を視聴したのですが、最後に個人間融資の被害を取り扱う司法書士が、個人間融資拡大の理由として「2010年に施行された貸金業法にある」と指摘していました。

貸金業法と格差が広がったことに関係があるんですか?

改正貸金業法が格差の固定化を助長したことで、借りられる属性にある個人が借りにくくなった個人に融資する慣行が広まったんです。
この信用格差の拡大を説明する上で、改正貸金業法の影響について説明する必要があります。

まず、背景を知るために
①上限金利規制の歴史
②貸金業法が資金需要者(借り手)に与えた影響
この2点について説明しますね。

貸金市場における金利規制の歴史

日本には金利を規制する法律ってあるんですか?

民事法である利息制限法と刑事法である出資法の二つがあります。
これは日本独特な制度で、その成り立ちと運用のされかたがちょっと複雑になっています。
まずは、金利規制の歴史から説明していきます。

利息制限法(民法)

金融市場の金利を規制する法律として、民事法である利息制限法の歴史は古いものです。
旧利息制限法は1877年に制定(1898年、1919年に改正)され、現在の利息制限法は1954年に制定されました。

利息制限法の制限金利は、
a)元本の額が10万円未満の場合年20%、
b)同様に10万円以上100万円未満の場合年18%、
c)同様に100万円以上の場合年15%
と規定されています。

この金利基準と刻みの価格は新法が制定されて以来、つまり1954年から改訂されていません。
ちなみに、1954年当時の大卒初任給は12,000円です。現在の大卒初任給が200,000円代と言われているので、今の10万円や100万円とはちょっと感覚が違う気がしますね。

出資法(刑事法)

次に出資法についてご説明します。
実は、出資法の制定まで上限金利を規制する刑事法は国内に存在しませんでした

出資法は、政府が終戦直後の混乱期に詐欺まがいな利殖商法と高利貸を取り締まるために制定したものです。
ちなみに上限金利は年109.5%と定めましたが、これは質屋の実勢金利をもとにしています。

その後、高度経済成長が終焉した1970年代後半になると過剰融資や取立が「サラ金問題」としてクローズアップされました。
そして、出資法の上限金利は、下記のような流れで段階的に引き下げられていきます。

1983年 年73.00%
1986年 年54.75%
1991年 年40.004%
(1999年 商工ローン問題発生、同12月に出資法改正)
2000年 年29.2%

この出資法が定める上限金利が引き下げられた推移を示すと図の通りになります。

図 法律上の上限金利と貸金業界大手2社の上限金利の推移

出典:筆者作成(大手2社とはアコムとプロミス)

なるほど~。利息制限法の上限金利と出資法の上限金利って違ったんですね。知らなかったです。。。

そうなんです。
そして、利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間での契約は民事上無効です。
しかし、1983年に制定された貸金業規制法では一定の要件下で「みなし弁済」制度として認められました

「みなし弁済」ってなんですか?

簡単に言うと、ある一定の条件を満たしたら利息制限法を超えていてもその利息が有効、というのがみなし弁済です。
利息制限法の上限金利以下は、銀行が主に有担保・有保証融資を。
利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間の「みなし金利帯」では、貸金業者が無担保・無保証融資を。
というように、市場の棲み分けが図られてきました。

条件があるとしても、制限を超えてるのに払わなきゃいけないってなんだか不思議ですね。
今も「みなし弁済」ってあるんですか?

いえ、2010年の貸金業法改正で完全撤廃されます。
最高裁が2006年1月にみなし弁済制度を実質的に否定する判決[i]を出し、この判決が当時の法改正論議に強い影響を与えました。

へぇ、最高裁が!確かに影響がありそうです。
それで法律はどうなったんですか?

いわゆる多重債務者[ii]の数を抑制することを目的として、2006年12月に貸金業制度(貸金業法・利息制限法・出資法)の大改正が行われました。

そんな流れだったんですね~。

この法改正で出資法の上限金利は利息制限法の水準まで引き下げられたことで、みなし弁済制度は廃止されました。
そして、これにより過払い金返還請求は一気に増大したんです。

とても大きな変化だったんですね。
ちなみに貸金業法ってどう変わったんですか?

それでは、貸金業法の改正ポイントを説明しますね。


貸金業制度2006年の大改正

2006年12月に改正された貸金業法のポイントは大きく3つあります。

①刑事上の上限金利を実質的に29.2%から15~20%に引き下げる。
②審査時に源泉徴収票等の提出を義務付け、個人年収の1/3を超える貸し付けを原則禁止する(総量規制)。
③政府の指定した信用情報機関が利用者の貸金業者からの債務状況を一元管理する。

そして貸金業法は公布日より4段階に渡り施行され、2010年6月で完全施行に至りました。

貸金業法は完全施行前に見直し規定も制定されました。
(法律施行後に実態を勘案して見直すものではなく、法律の完全施行前に「法律が円滑に実施するために講ずべき施策の有無を検討する」という規定でした。)

完全施行前の見直し規定が盛り込まれた法律は日本の憲政史上で唯一です。
「改正による影響を十分に予測できていない状況下で改正した」という当時の事情が窺えますね。

貸金業法の議論は一貫して貸金業界を否定する空気の下で進展し、マスコミからの批判が長引くことを恐れた自民党が議論の終結を急がせた背景を物語ります。

そして2006年12月の法改正以降、金融庁は2010年の完全施行に向けて粛々と作業を進めるものの、法改正の歪みとして様々な副作用を生じさせてきました。

えーっと、、、法律は変えたけどまだ問題が残ってたんですか?

「改正貸金業法が格差の固定化を助長した」点を顧みる機会は確かにあったと言えますね。
けれど、当時の民主党政権は貸金業法の完全施行を実施しました。

え!?どうしてですか!?気になります!!

それについては、また次の特集でお伝えしますね。


[i] 平成16年(受)第1518号貸金業請求事件(最高裁判所)。

[ii] 多重債務者の明確な定義はなかった。当時、日弁連、金融庁、そして警察庁において多重債務に関する定義も異なっていた。金融庁で公開された懇談会資料を精査しても「多重債務者」について明確な定義を見出すことができない。また貸金業法を上程した当時の山本有二・金融担当大臣は事後のインタビューにて「貸金業者からの複数または多額な借金により、生活に支障が生じた借り手と認識している。日本にはこのような借り手の層がどの程度存在するのか統計が十分ではないため、正確な人数の把握は困難」と多重債務者の定義が困難であることを認めている(山本有二「多重債務問題の根本的解決策は、カウンセリング主体の社会構造」『CREDIT AGE』、2008年4月号)。