フィンテックの未来―トランザクションレンディングはなぜ日本で根付かないのか?

特集・コラム

東京の夜空に浮かぶフィンテックの文字

前号前々号では、トランザクションレンディングが中小企業への融資やネット上の流通にとても役に立つことを教えて頂きました!

既に海外ではネット上の流通を促進するインフラとして機能しているんですよ。

日本でもYahoo!や楽天などが参入していますけど、上限金利の影響で本来のメリットをあまり発揮できていない状況なんですよね。

最近、こうした実情を受けて金融庁が事業者金融における法改正の必要性を議論し始める兆しがみられます。
今回はその経緯や先進国の実情を説明していきます!

トランザクションレンディングが根付かない理由

手のひらに浮かぶグラフと%の3Dイメージ

2006年の貸金業法改正時、利息制限法の上限金利の引き上げ(規制緩和)について議論されました。
しかし、議論の的となったのは「消費者金融」だったので利息制限法の引き上げは ’消費者保護’ に反するという理由から見送られてしまいました。

つまり、「事業者金融」はおざなりにされてしまったのです。

そのため、今後、中小企業の資金繰り策に多様性を広げることを目的として、
例えば、トランザクションレンディングに限り利息制限法の上限金利を引き上げる特例が定められるかもしれません。

ただし、過剰貸し付けを防止するため、審査時に消費者金融のように借り手である企業の信用情報機関への照会と登録を義務付け、信用情報を共有化するデータの整備が必要となります。
また、この特例を活用する企業に対して、規制当局が重点的に監督する体制も必要となります。

今後、トランザクションレンディングを金融分野のフィンテックとして日本に根付かせるためには、利息制限法の規制緩和が新規参入の動機付けになるでしょう。

金融庁における上限金利の討議と国際調査

2棟の高層ビル

2018年に開催された金融庁の審議会では、フィンテックの普及を阻害する要因の一つとして、上限金利が取り上げられました。
その際の討議資料で触れられた一節を抜粋します。

ITの進展等に伴う新たな「資金供与」サービスの取扱い

取引等に伴い蓄積されたデータを、サービス提供者が資金需要者の審査等に活用することにより、以前より迅速に「資金供与」を行うことが 可能となってきている。

その際、例えば、数日程度までの極めて短期の事業者の資金需要に対応することも技術的に可能となってきているが、市場の金利情勢によっては、上限金利の規制により、資金供給が困難になり得るという指摘があるが、どう考えるか。

資料:金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(第3回)議事次第(2018年1月17日)

この討議資料における一節は、明らかにトランザクションレンディングのビジネスモデルを想定した内容であり、利息制限法の規制緩和について議論する必要性を示しています。
当日の審議会では、この議題に対してさほど反対の意見は出ませんでした。

しかしその後、本件に関する議論は金融庁の審議会で継続されることはなく、一瞬にして消えてしまいました。
そうした中、2年ほどの空白期間を経て金融庁は突然、貸金業に関する国際比較の結果を発表したのです。

以下の表は金融庁が委託した外部の調査機関がまとめたものです。
英国・ドイツ・フランス・米国における上限金利の規制が詳細に調査されています。
自民党の金融制度調査会での議論を受けて、海外の弁護士事務所に調査を依頼したものだと言われています。
調査内容は膨大な英文で書かれていますが、ここでは概要を整理してご紹介しましょう。
この表では、日本・英国・ドイツ・フランスを対象に貸金業の制度に関して比較されています。

<貸金業に関する国際比較 (金融庁2020年調査から抜粋)>

日本 英国 ドイツ フランス
分野 消費者金融 事業者金融 消費者金融 事業者金融 消費者金融 事業者金融 消費者金融 事業者金融
規制の範囲 消費者金融と事業者金融は同一規制 あり なし 上限金利を規制する法律はない あり なし
上限金利 ・元本10万円未満 →年利20%
・元本10万円以上100万円未満 →年利18%
・元本100万円以上 →年利15%
・元本の100%
・日利0.8% いずれか低い方(無期限)
なし ただし、判例では過失があった場合
・市場金利の2倍
・市場金利+12% のいずれか低い方を超えると、契約は司法上無効。
※2019年9月の市場金利:年利5.87%
・~3000ユーロ:年利21.04%
・3000~6000ユーロ:年利12.12%
・6000ユーロ超:年利5.75%
なし
金利の範囲 (債務不履行時の手数料等の例外を除き、)何らの名義をもってするを問わず、金銭の貸付けに関し債権者の受ける元本以外の金銭 (契約の公正な証明に係る費用等の例外を除き、)規制対象契約に関連して、借手本人から又は借手に代わって貸手に支払われる全ての費用 なし (債務不履行時の手数料等の例外を除き、)借手に課される費用の総額 (債務不履行時の手数料等の例外を除き、)直接・間接を問わず、借手から支払われる、あらゆる種類の金利、手数料及び報酬 なし

国際調査が示す貸金業に関する各国の実情

新聞の上にある地球儀

日本では消費者金融と事業者金融に同一の金利規制が敷かれています。
これは、他の先進国とは異なるシステムです。英国・ドイツ・フランスでは、事業者金融に対して上限金利を規制する法律はありません。

事業者金融における中小企業の資金ニーズは多種多様です。こうした事業者金融分野の資金ニーズに金融市場が応えるために、各国の上限金利は余裕をもって制度設計されていると考えられます。

ドイツの実情

ドイツでは、消費者金融も事業者金融も上限金利を規制する法律がありません。
しかし、情報開示や十分な説明が行われなかったなど、契約時に過失があった場合「市場金利の2倍」又は「市場金利+12%」の上限金利が適用されます。

フランスの実情

世界的に消費者保護を徹底しているフランスでは、消費者を含めた資金需要者保護の観点から金融サービスごとに細かい行為規制が敷かれています。
一方で、事業者金融において上限金利を規制する法律はありません。

フランスでは、地域経済においてコミュニティを重視する風土があります。
そこで、フランス政府は新たな中小企業の資金調達方法としてクラウドファンディングに着目し、これを国内に根付かせるために制度を新たに立法し、クラウドファンディングの普及に努めました。

その結果、今日のフランスにおけるクラウドファンディングの融資実績は銀行に迫る勢いで成長を遂げています。
こうした制度の下、一つ星の起業家シェフが開業時に資金調達を行い、無事事業が軌道に乗った暁には、元本の償還とともに開店後に支給される自店の食事券を「みなし利息」として配当するなど、ユニークなクラウドファンディングを活用した資金調達モデルが発達しています。

米国の実情

なお、米国では州ごとに規制が異なるため、同表から調査結果を割愛しています。
米国では、金融会社の場合、規制の対象は本社が立地する州となります。
このため、規制の緩い州に本社機能を立地すれば、規制の厳しい州の州法の影響を実質的に受けることを回避できます。

例えば、トランザクションレンディングを始めとしたフィンテックのサービスはネットを介し、同一ルールの下、州をまたいで全米に展開することができます。 つまり、デラウエア州のような金利規制の緩い州に本社を置けば、自由度の高いサービスを全米一律のルールで提供できることになります。

日本の融資分野におけるフィンテック拡大に向けた課題

現在、日本における融資分野のフィンテックは未発達段階です。

貸金業法改正により資金の流れが銀行に一本化され、事業の多様性を育む活力が削がれてしまっているというのが現状です。
そして、銀行は融資の安全性を第一とするため、貸付先のビジネスモデルは画一的になりがちです。

事業者金融における上限金利の規制を消費者金融から分離して規制を行うことは、今後の日本の金融行政における課題となるでしょう。

他の先進国と比べることで日本の課題が見えてきましたね!

そうですね。
金融と情報の融合がグローバルで進展する中で、日本ではどうしても法律の整備が行き届かなく、世界に遅れがちである点は事実です。
今後も日本でのトランザクションレンディングの動向について注目ですよ!


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