【最新】アメリカの不動産市場の現況|新型コロナウイルスの影響は?

投資

そびえ立つ複数の高層ビル

トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したことが大々的に報道されています。アメリカではまだ新型コロナウイルスの感染は収まってないみたいですね。Amazonの従業員だけでも2万人近く感染しているというニュースもありました。

それは驚きですね。でも、株価はリーマンショックの時みたいに暴落しているわけではないですし、経済のほうはなんとか持ちこたえていませんか?

そうだと良いですけど…。不動産市場はどうでしょうか?新型コロナウイルスが蔓延すると引越しを控える人も多そうですし、取引が止まってしまうのではないかと危惧しています。

本当にそうでしょうか?今回は、コロナ禍の中でのアメリカの最新不動産市場について詳細なレポートを交えながら解説していきましょう!

不動産市場に影響を与える新型コロナウイルス

ニューヨークのエンパイアステートビルと高層ビル群

新型コロナウイルスの収束は見えずワクチン開発の見通しも立っていない状況のなかで、日本経済はゆっくりと以前のような活況を取り戻しつつあります。

しかし世界的に見れば、新型コロナウイルスの感染拡大は収まっておらず、アメリカ、ブラジル、インドなど、特定の国・地域では感染が拡大している状況です。イギリス・バーミンガムでは、感染拡大を受けて再度のロックダウンを経験しています。

米国不動産カウンセラー協会(Counselors of Real Estate)が毎年発表している年次報告である、「CREが考える不動産に影響を与える今年の10大テーマ2020-21年版」(The CRE 2020-21 Top Ten Issues Affecting Real Estate)によれば、新型コロナウイルスはNo.1のテーマにランクインしています。米商務省が7月30日に発表した2020年第2四半期のGDP速報値は年率換算で前期比32.9%という前代未聞の落ち込みを記録するなど、新型コロナウイルスはアメリカ経済を深刻な状況に陥らせた問題ですので至極当然の結果といえるでしょう。

しかし米国不動産カウンセラー協会は、不動産需要が単に落ち込む可能性のみを指摘しているのではなく、新しい可能性も指摘しています。

すなわち、新型コロナウイルスの影響によって密を避けソーシャルディスタンスを保つための新しい空間の使い方が求められる結果、オフィス・商業施設・劇場などの顧客当たりの必要面積が増加し、新たな不動産需要を生むのではないか、という指摘です。

現在のところ、将来的なアメリカの不動産市場についての予測はつきにくいですが、新型コロナウイルス蔓延から約半年が経過し、さまざまな不動産関連指標が発表されています。

次に、過去にアメリカが大きな不動産不況に陥ったときはどのような市場環境だったのかについて見ていきましょう。

コロナ前にアメリカで起きた不動産不況時はどうだったか?

おしゃれな街角

ここ40年間でアメリカが大きな不動産不況に陥った時期は2回しかなく、いずれも危機後は不動産価格が大幅に落ち込みました。

一回目は80年代後半から90年代初頭にかけて起こったS&L(アメリカ貯蓄貸付組合)危機、二回目は2008年のリーマンショックです。不動産市場に大量の金融貸出が行われバブル的な様相を見せた後に調整局面に入った、という状況は類似しています。

リーマンショック以降の不動産市場の安定的成長

リーマンショックが不動産業界に激震をもたらしたのは記憶に新しいところでしょう。

震源地のアメリカでも、不動産市場の回復に時間はかかったものの、市場が一度上昇してからは、着実に進展していきました。

リーマンショック前のような過激な不動産融資が行われなくなったこと、そしてトランプ政権以降米国経済が堅調に推移したことが、不動産市場に良い影響をもたらした理由として挙げられます。

S&P発表のケース・シラー20都市圏住宅価格指数(2000年1月を100とした場合の住宅価格指数)によれば、リーマンショック後2012年3月に134.07を記録して底を打ったのちに指数は上昇し続け、2014年3月には166.8とリーマンショック前の水準を上回りました。その後も順調に推移し、直近(2020年8月)では229.35となっています。

〈公表済のS&P/ケース・シラー指数より著者作成〉

不動産関連融資も安定的に推移

リーマンショック以降は、不動産ローンの残高が急激に増加したり、住宅ローンの延滞率が上昇したりするなどの不健全な指標についても見られなくなりました。

金融規制が厳しくなったこともあり、不動産市場に金融マネーが過剰に流れなくなったからです。

ユーロ圏や日本と同様にアメリカも大幅な金融緩和を行い低金利が続いたことも、不動産市場を押し上げる方向にはたらきました。

その結果、米FRBデータによると、2010年第2四半期には11.34%まで上昇した住宅ローン延滞率は2020年には4%前後まで低下しています。

コロナ後のアメリカの不動産市場

川沿いに並ぶ家

2020年3月下旬、アメリカでは各州異なる日時に外出制限を伴うロックダウンが開始されました。経済活動がストップし各産業セクターに大きな影響を及ぼしましたが、不動産部門についても例外ではありませんでした。

米商務省が発表した2020年4月住宅着工件数(季節調整済、年率換算値)は前月の121.6万戸に対して、マイナス30.2%の89.1万戸、住宅着工許可件数(季節調整済、年率換算値)については、2020年3月の135.3万件に対して、4月はマイナス20.8%の107.4件となりました。住宅着工件数における30.2%の下落率は記録として遡ることができる1959年以降過去最大です。

ニューヨーク州で初めての感染者が発見されたのが3月1日、ロックダウン開始が3月23日でしたので、わずか20日間程度でニューヨーク州はロックダウンに追い込まれたことになります。アメリカ各州でのロックダウンはおおむね1か月後の4月下旬から5月中旬まで続き、日常生活に必要な外出以外は制限されました。

住宅市場は一時的に下落するも持ち直す

ロックダウンの結果、住宅市場に関する指標は大幅な下落を記録しました。

しかし、3月は一時的な下落をみせたものの、各州でロックダウンが解除された結果、下落にブレーキがかかったようです。

2020年4月の新築住宅販売戸数は前月比プラス0.6%の623,000戸と3か月ぶりに増加し、底堅い動きを見せました。

その後、2020年8月はハリケーンの影響もあり、アメリカ南部では指数が落ち込んだものの、先述の指標である住宅着工件数も住宅着工許可件数も、6月から9月にかけて住宅市場は急回復をみせます。以下の表のように好調の流れは持続しています。

米国商務省のデータより著者作成

劇的な回復の背景には、歴史的な低金利が続いていることがあります。米国10年国債利回りはここ数年2~3%で推移していた状況の中で、異次元の金融緩和によって0.5%程度にまでレンジを切り下げました。これにつられて、返済期間30年の住宅ローン金利も過去最低の3%台を記録し、ほぼ日本と変わらない水準まで低下しています。

これに加えて、郊外への引っ越し希望者が新築住宅を購入する傾向が強くなったことが挙げられます。6月上旬に実施された米国世論調査では、賃貸物件への転居も含む転居者全体の3割が、新型コロナ感染リスクが高まってきたことが最大の転居の理由であると回答しています。感染防止のために人口密度の高い都市部から郊外へ住居を移転したい人が明らかに増加したものと考えられます。

また、感染防止のためのテレワークの拡大によって郊外のより広い住戸に住むことができるようになったことも郊外への引っ越し希望者が増加した一因です。

このような新規購入者が増加したことで住宅在庫が減少し、住宅の購入意欲にさらに拍車をかけたのです。

このほかにも、住宅販売はマスク着用のうえで営業活動が可能であったこと、建設セクターにおける作業が行動制限の対象にならなかったことも住宅市場回復の大きな要因であったと指摘する専門家もいます。

感染対策による住宅の消毒やリフォームも増加し、新型コロナウイルスの蔓延は新しい需要を生み出すことにも繋がっているようです。

具体的な指標がどのようであったかをみてみると、2020年7月の住宅着工件数(季節調整済、年率換算値)は1,496,000戸、前月比プラス22.6%と3か月連続の大幅増加となったほか、市場予想の1,245,000戸も大幅に上回りました。

住宅着工許可件数(季節調整済、年率換算値)についても1,495,000戸と前月比プラス18.8%とこちらも3か月連続でプラスとなり、市場予想の1,326,000戸を大幅に上回りました。

さらに、7月の新築住宅販売件数(季節調整済、年率換算値)は、901,000戸で前月比プラス13.9%、3か月連続の大幅増加で2006年12月以来13年7か月ぶりの高水準となりました。

全米ホームビルダー協会(NAHB)の調査によれば、8月の新築物件購入見込み客数は1985年の統計開始以来で最高水準となった、との報告もあります。

つまり、住宅の建設・販売市況については、一時的な落ち込みは見られたものの回復のスピードは著しく、結果的にコロナ禍以前の状態に戻りつつあります。

不動産検索サイトも活況

アメリカの巨大な中古住宅売買・賃貸市場のプラットホームである大手不動産情報サイト「Zillow」のデータによると、サイトトラフィックは3月に一時的に減少したものの、4月になって昨年対比20%増を記録しました。ロックダウン中の中古不動産への関心の高さがうかがえます。

都市部のオフィス・賃貸住宅空室率は上昇二極化が進展か

一方、オフィス賃貸市場に目を向けると、ニューヨーク、ワシントンD.C.などの都市部では局所的にオフィス・商業施設賃料の下落がみられました。

ロックダウンによる新規オフィスビルの供給の遅れや企業活動の停滞によるオフィス移転需要の縮小、また商業施設が余剰の床面積をサブリースに出したことを原因とする賃貸床面積の増加などがその理由です。

感染リスクを減らすために人との接触の少ない郊外へ住居を移転することは自然の流れです。アメリカの大都市の賃料相場がここ数年高止まりしていた状況を踏まえれば、コロナショックを機に調整局面を迎えたとみることができるでしょう。

例としてCBRE発表のデータによると、ニューヨーク市の店舗賃料の平均は、前年度比9%減の1平方フィートあたり714ドルとなっています。

住宅の賃料相場についても、ニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンD.C.、サンフランシスコなど、住民の多い都市では住宅の空室率上昇、および賃料の下落が確認されています。

特に、世界的に見ても住宅の賃料がトップクラスであるニューヨークでは、住民の約40%が郊外に脱出したことにより、マンハッタン地区の賃貸住宅市場は大きな影響を受けている様子です。住宅物件の在庫が急増し、2020年6月の住宅賃料相場は6.6%下落したとの報道もあります。

富裕層を対象とした都心の高額物件は引き続き厳しい状況が続く一方で、低廉な価格帯の住居の賃貸需要は衰えていません。アメリカの賃貸住宅市場は二極化が進むというシンクタンクの予測もあります。

まとめ

専門家の中には、新型コロナウイルス拡大の影響で、不動産市場の先行きを不安視し、リーマンショックを超える不況がくると予測した人も数多くいました。米国GDPが過去最大の落ち込みを記録したことを考えれば、このような予想もむしろ自然だったのでしょう。

しかし、アメリカ不動産市場において、今回の新型コロナウイルスショックはS&L危機やリーマンショックの時とは状況が大きく違います。

S&L危機やリーマンショックの時は、不健全な金融政策や金融機関の問題のある融資姿勢によってアメリカの不動産市場がバブルになっており調整局面に入りやすい市況でした。今回は、過去の歴史への反省もあって、不動産市場は堅実に伸びており、過剰な融資による住宅ローンの延滞が増えていたなどの悪いシグナルはありません。

コロナ禍におけるアメリカの不動産市場は、一時は急激な落ち込みを記録し住宅ローンの延滞率も上昇したものの、急激なスピードで回復し以前のような活況を取り戻しつつあります。

局所的にニューヨークやワシントンD.C.などの大都市では賃料が下落したところもありますが、経済市況がそれほど痛手を被っていないところから、早晩元の市況に戻ると考えられます。

来年に向けてコロナ禍が収束するのか、また世界的な拡大を見せるのかについては、事態を注意深く見守っていく必要がありますが、一時期の危機は脱したものと考えて良いでしょう。


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