住宅ローンと上手に付き合う!「繰り上げ返済」の活用法【FPが考えるお金の人生設計】
ローン

前回は現金一括よりも住宅ローンを組んだ方がお得になるカラクリを教えてもらいました!
でも住宅ローンって長期にわたりますよね。
できるかぎり早く返したい!って思う人も多いのではないでしょうか?
そうですね。
予定より早く返したい方のために「繰り上げ返済」という方法があるんです。
「残金一括返済」だけでなく「一部繰り上げ返済」もできるので、少額でコツコツと繰り上げ返済を利用する方もいらっしゃいます。
繰り上げ返済分は元金に充てられるので、ローン全体の支払額を減らすことができるんですよ!
ローンの支払額を減らせるんですか!?
気になります!くわしく教えてください!
この記事の目次
繰り上げ返済のケーススタディ
それでは、例を用いて繰り上げ返済について考えていきましょう。
住宅ローンを借りるときには次のような条件を決め、契約書に署名捺印をしてローン返済がスタートします。
Aさんの住宅ローン条件
- 借りる金額:4000万円
- 金利:1.50%
- 期間:35年(返済回数420回)
- 返済日:毎月5日
- 返済方法:元利均等返済方式
- ボーナス時加算:なし
- 返済月額:122,473円
- 支払利息額:11,438,816円
本来ローン契約というのは、契約書に定めたとおりに決めた金額を毎月の期日に返済することが重要です。
でも金融機関は「約束した計画よりも早く返してくれること」には寛容です。
この、約束よりも早く返すことを「繰り上げ返済」と言います。
繰り上げ返済をする場合には、金利は上がりませんし、前述のとおり前倒しで返した方が、その後の利息が減ります。
※繰り上げ返済を行う際に返済手数料がかかる場合がございます。詳細は各金融機関へご確認ください。
2つの繰り上げ返済方法
「一部繰り上げ返済」には2つの方法があります。
- 期間短縮型
毎月の返済額を変えずに、借入期間を短縮する方法 - 返済額軽減型(返済額見直し型)
借入期間を変えずに、毎月の返済額を減らす方法
違いは「返済期間」を減らすか「毎月の返済額」を減らすかですが、どちらがお得なのでしょうか?
AさんとBさんのケースでそれぞれ考えてみましょう。
ポイントは金利と繰り上げ返済のタイミングです。
Aさんの場合(金利1.5%・3年経過後に繰り上げ返済)
Aさんの場合、金利は1.5%で契約しています。
購入から3年経過後、200万円を繰り上げ返済した場合の効果を見てみます。
期間短縮型

毎月の返済額は変わりませんが、返済期間を2年1か月前倒しすることができました。
その結果として、支払う利息額は1,135,708円削減することが可能です。
返済額軽減型

毎月の返済額を6,574円減額することができました。
でも、返済期間に変わりはありません。
その結果として、支払う利息額は518,267円削減することが可能です。
効果を比較

上の表で期間短縮型と返済額軽減型の効果を比べたところ、支払い利息額の減額効果が高いのは「期間短縮型」となります。
「返済額軽減型」よりも「期間短縮型」の方が、60万円以上もお得です。
この結果だけを見ると、繰り上げ返済をする際には「期間短縮型」を選べば良さそうです。
しかし、あなたが支払っている住宅ローンの内容によって、その効果は変わってきます。
別の金利と繰り上げ返済のタイミングでもシミュレーションしてみましょう。
Bさんの場合(金利0.5%・13年経過後に繰り上げ返済)
Bさんは、金利0.5%でそれ以外はAさんと同じ内容で住宅ローンを契約しました。
Bさんの住宅ローン条件
- 借りる金額:4000万円
- 金利:0.50%
- 期間:35年(返済回数420回)
- 返済日:毎月5日
- 返済方法:元利均等返済方式
- ボーナス時加算:なし
- 返済月額:103,834円
- 支払利息額:3,610,126円
Bさんは「住宅ローン減税」が13年間使えそうです。
そこで、13年間は現在のローン返済を続け、購入から13年経過後に200万円を繰り上げ返済することにしました。
さて、繰り上げ返済の効果はどれくらいあるのでしょうか?
期間短縮型

毎月の返済額は変わりませんが、返済期間を1年9か月前倒しすることができました。
その結果として、支払う利息額は218,101円削減することが可能です。
返済額軽減型

毎月の返済額を8,031円減額することができました。
でも、返済期間に変わりはありません。
その結果として、支払う利息額は111,990円削減することが可能です。
効果を比較

支払利息額の減額効果が高いのは「期間短縮型」ですが、お得なのは10万円程度です。
一方、毎月の家計のやりくり(資金繰り)に注目すると「返済額軽減型」を選択した場合、毎月8千円も自由に使えるお金が増えます。
つまり、この先20年以上「毎年約10万円」の自由につかえるお金が手元に残ります。
この結果を見ると、「返済額軽減型」の繰り上げ返済に魅力を感じる人も多いのではないでしょうか。
実際に繰り上げ返済をする際には、本やインターネット上の情報だけで判断せず、必ず自分の場合のシミュレーションをしてみることがポイントです。
ローン完済時のあなたは何歳?

さて、繰り上げ返済を「期間短縮型」と「返済額軽減型」のどちらが安心でお得なのかという視点で考えてみました。
この比較をするときに、忘れてはいけない大事な情報があります。
それは「あなたの年齢」です。
例えば、同じ35年ローンを組んだ二人でもローン開始年齢や完済時年齢によって、繰り上げ返済で選ぶべき方法は異なるのです。
- Cさんは40歳の時に35年ローンを組んで、完済時年齢が75歳
- Dさんは30歳の時に35年ローンを組んで、完済時年齢が65歳
繰り上げ返済で「期間短縮型」を選んだ場合、5年短縮できたとして、
- Cさんの完済時年齢は70歳
- Dさんの完済時年齢は60歳
定年退職が60歳であるならば、多くの人は60歳以降に年収が下がります。
Cさんは年収が下がった60歳以降にも月々の返済を行わなければいけません。
そうなると、返済する総額が抑えられる「期間短縮型」よりも、毎月の返済額が軽減される「返済額軽減型」を利用した繰り上げ返済の方が良いのではないでしょうか?
住宅ローンの繰り上げ返済は、損得目線だけではなく完済時年齢も視野に入れて、老後に安心な生活が送れることを中心に考えましょう。