フルローンが安心?本当に「お得」で「安心」な住宅ローンの返し方【FPが考えるお金の人生設計】

ローン

前回は2種類の「繰り上げ返済」方法について教えてもらいました!
金利や繰り上げ返済タイミングによって、返済方法を考える必要があるんですね。

はい!
色々な情報が本やネット記事で掲載されていますが、状況や人生設計は人によって違うので、「自分の場合」でシミュレーションしてみることをオススメします。

そうですね。
自分の生活や将来をよく考えて決めていきたいと思います。

さて、今回はファイナンシャルプランナーが考える、本当に【安心】で【お得】な住宅ローンの返し方についてお伝えしたいと思います。
ポイントは、あえてフルローン(住宅購入時に頭金を使わない物件価格の100%ローン)を組んで、繰り上げ返済を上手に組み合わせることです。

フルローンは危険?それとも安心?

購入する不動産価格の全額を借りる「フルローン」は危険と思っていませんか?
一般的には、物件価格の20%は頭金を用意してローンを組むのは80%以内にすべきといわれます。

でも、その話は本当でしょうか?

確かに、頭金を用意できなくて「フルローン」を組むのは危険です。
しかし、頭金を20%以上用意した上で「あえてフルローン」を組むのは安心でお得な住宅ローンなんです。

今回も事例を使って、ご一緒に考えていきましょう。

住宅ローン返済のケーススタディ

Aさんは4000万円の住宅を購入する事にしました。
諸費用の他に頭金として1000万円を用意しているので、次のローン計画をしています。

⓪頭金を組み込んでローンを組む場合

⓪【Aさんの住宅ローン】

  • 頭金:1000万円
  • 借りる額:3000万円
  • 金利:0.50%(変動金利)
  • 期間:35年0ヶ月(420回)
  • 返済方法:元利均等返済方式
  • ボーナス時加算:なし
  • 返済月額:77,875円
  • 支払い利息額:2,707,560円(ローン完済までに支払う利息額)
    ※計算の過程において金利変動はないものとする

これが一般的なローンの組み方だと思います。
頭金をしっかりと組み込んで、銀行から借りるローン額を抑えました。

常識的な考え方だと思いますが、「現金」を手放して大丈夫でしょうか?
コロナ禍のような非常事態時において、先行きが不安定で先々に何があるか分かりません。
有事の際、すぐ使える「現金」が無いことは大きなリスクになりますし、「現金」があることで様々なリスクに対応できる可能性が広がります。

⓪のAさんが組んだローンは、はたして本当に安心でお得なのでしょうか?

ここから常識を疑っていきましょう。

①10年後に1000万円を「期間短縮型」で繰り上げ返済した場合

あえて、頭金は使わずに「フルローン」でローンを組みます。
そして、頭金として用意していた1000万円を10年後に繰り上げ返済に使います。

①【Aさんの住宅ローン】

  • 頭金:0円
  • 借りる額:4000万円
  • 金利:0.50%(変動金利)
  • 期間:26年2か月(314回)
  • 返済方法:元利均等返済方式
  • ボーナス時加算:なし
  • 返済月額:103,834円
  • 支払い利息額:2,536,866円(ローン完済までに支払う利息額)
    ※計算の過程において金利変動はないものとする

「期間短縮型」の繰り上げ返済をしたことで、返済期間を8年10ヶ月短縮することができ、かつ支払利息額を170,694円減額することができそうです。

なんと、購入時には頭金を使わずに、後に繰り上げ返済をした方がお得なのです。
しかも、この10年の間に「お金」が必要な緊急事態が生じたとしても、直ぐに対応可能なので安心です。

支払い利息の減額:2,536,866円 – 2,707,560円 = ▲170,694円

②10年間、100万円ずつ「期間短縮型」で繰り上げ返済した場合

上記①は10年後に1000万円を繰り上げ返済したケースでしたが、もう少し早く繰り上げ返済をしたらどうなるでしょうか?
次は、住宅購入の1年後から10年連続で100万円の繰り上げ返済を実行した場合を計算してみます。

②【Aさんの住宅ローン】

  • 頭金:0円
  • 借りる額:4000万円
  • 金利:0.50%(変動金利)
  • 期間:26年4ヶ月(316回)
  • 返済日:毎月5日
  • 返済方法:元利均等返済方式
  • ボーナス時加算:なし
  • 返済月額:103,834円
  • 支払い利息額:2,333,534円(ローン完済までに支払う利息額)
    ※計算の過程において金利変動はないものとする

「期間短縮型」の繰り上げ返済を重ねたことで、返済期間を8年8ヶ月短縮することができ、かつ支払利息額は374,026円減額することができそうです。

10年後に1000万円をまとめて繰り上げ返済するよりも、こまめに繰り返した方がお得なことが分かりますね。
このケースも「お金」が必要な緊急事態が生じたとしても、直ぐに対応可能なので安心です。

支払い利息の減額:2,333,534円 – 2,707,560円 = ▲374,026円

③10年後に1000万円を「返済額軽減型」で繰り上げ返済した場合

前回の記事で、繰り上げ返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があることをお伝えしました。
そこで「返済額軽減型」でも、上記①.②と同様の返済パターンで計算してみます。

③【Aさんの住宅ローン】

  • 頭金:0円
  • 借りる額:4000万円
  • 金利:0.50%(変動金利)
  • 期間:35年0か月(420回)
  • 返済方法:元利均等返済方式
  • ボーナス時加算:なし
  • 返済月額:103,834円
    →11年目から:68,255円
  • 支払い利息額:2,972,216円(ローン完済までに支払う利息額)
    ※計算の過程において金利変動はないものとする

「返済額軽減型」の繰り上げ返済をしたことで、11年目から返済月額は35,579円減額することができそうです。
60歳以降もローン返済が続くような場合には、頭金として1000万円を使った場合と比較しても、こちらの方が安心な返済と言えそうです。

でも、支払い利息額は頭金として使った⓪の方がお得でした。

返済月額の減額:68,255円 – 103,834円 = ▲35,579円
支払い利息の減額:2,972,216円 – 2,707,560円 = 264,656円

④10年間、100万円ずつ「返済額軽減型」で繰り上げ返済した場合

④【Aさんの住宅ローン】

  • 頭金:0円
  • 借りる額:4000万円
  • 金利:0.50%(変動金利)
  • 期間:35年0ヶ月(420回)
  • 返済方法:元利均等返済方式
  • ボーナス時加算:なし
  • 支払い利息額:2,854,433円(ローン完済までに支払う利息額)
  • 返済月額:103,834円
    →1年後(101,162円)
    →2年後(98,416円)
    →3年後(95,590円)
    →4年後(92,681円)
    →5年後(89,681円)
    →6年後(86,585円)
    →7年後(83,386円)
    →8年後(80,077円)
    →9年後(76,648円)
    →10年後(73,090円)
  • 支払い利息額:2,854,433円(ローン完済までに支払う利息額)
    ※計算の過程において金利変動はないものとする

11年目から返済月額は、「③一括で1000万円を繰り上げ返済」の方がお得だし、総返済額も「⓪頭金として1000万円」の方がお得なので一見メリットが無さそうです。

では、ここでもう一歩深く考えてみましょう。

「期間短縮型」は、繰り上げ返済後も毎月の返済額が変わらないので貯金をする余裕がないかも知れません。
でも「返済額軽減型」は、返済をするほど毎月の返済額が減っていきます。
つまり、当初の返済額との差額分を貯金することができます。

この差額分も繰り上げ返済にまわしたらどうなるでしょうか?

⑤10年間、100万円ずつ+貯金分を「返済額軽減型」で繰り上げ返済した場合

1年後に100万円を繰り上げ返済した場合、月々の返済額が2,672円分減るので2年目は年間で約3万円ほど貯金できます。
すると2年後は103万円(100万円+3万円)を繰り上げ返済にまわせます。

このように繰り上げ返済を続けていくと、年間の貯金額も徐々に上がっていくので下記のように繰り上げ返済ができます。

【返済額軽減型の繰上返済】

返済額軽減型で貯金ができる家計になっているため、11年後以降も貯金額を繰り上げ返済にまわすことが可能です。
ちなみに、11年後は月々の返済額が36,275円も減っているので年間で約43万円も貯金できます。

引き続き、貯金を繰り上げ返済にまわし続けた結果、なんと住宅購入から26年後にはローンが完済します。

【11年後以降の繰り上げ返済】

期間短縮型ではないですが、繰り上げ返済を重ねて着実にローン残高が減っていき、結果的に26年後の繰り上げ返済で完済となります。
加えて、家計がピンチの年があれば「繰り上げ返済をしない」という選択も残しておけます。

これが、私が考える本当に【安心】で【お得】な住宅ローンの返し方です。

⑤【Aさんの住宅ローン】

  • 頭金:0円
  • 借りる額:4000万円
  • 金利:0.50%(変動金利)
  • 期間:26年0ヶ月(312回)
  • 返済方法:元利均等返済方式
  • ボーナス時加算:なし
  • 返済月額:103,834円
    →1年後(101,162円)
    →2年後(98,333円)
    →3年後(95,338円)
    →4年後(92,138円)
    →5年後(88,718円)
    →6年後(85,065円)
    →7年後(81,163円)
    →8年後(76,959円)
    →9年後(72,433円)
    →10年後(67,559円)
    →11年後(65,969円)
    →12年後(64,237円)
    →13年後(62,350円)
    →14年後(60,293円)
    →15年後(58,007円)
    →16年後(55,513円)
    →17年後(52,741円)
    →18年後(49,606円)
    →19年後(46,065円)
    →20年後(42,064円)
    →21年後(37,476円)
    →22年後(32,212円)
    →23年後(26,088円)
    →24年後(18,792円)
    →25年後(10,004円)
    →26年後(0円)
  • 支払い利息額:2,854,433円(ローン完済までに支払う利息額)
    ※計算の過程において金利変動はないものとする

支払い利息の減額:2,320,063円 – 2,707,560円 = ▲387,497円

ポイントは、毎月のローン返済額の予算として、最初に「103,834円/月」を確保することです。
その後「返済額軽減型」の繰り上げ返済を重ね続けます。

その結果26年で完済することができ、最もお得と思われた「②10年間、100万円ずつ「期間短縮型」で繰り上げ返済した場合」よりもお得。
かつ、返済月額がどんどん減っていくので家計の固定費が下げられて安心に繋がります。

不思議ですね!
返済額軽減型で計画的に繰り上げ返済することで、安心でお得にローンを組むことができるんですね。

しっかりシミュレーションすることで、自分に合った一番安心でお得なローン返済方法を見つけることができます。
是非、さまざまなパターンで返済計画をシミュレーションしてみてください。