リバースモーゲージとハウスリースバック【人生100年時代―老後のくらし計画】
ローン

住宅ローンの返済が厳しいけど、家は売りたくない。
そんなときに使えるのが「リバースモーゲージ」と以前の記事でお話しました。
覚えています!
家の所有権を手放さずに老後資金を調達できる方法として、解説して頂きました。
そうですね。
実は、実際の相談の現場では「リバースモーゲージ」と併せて「ハウスリースバック」を検討するシーンが良くあるんですよ。
「ハウスリースバック」ですか…。
以前の記事でも軽く触れていましたが、くわしくはどんなサービスなのでしょうか?
では、今回は「リバースモーゲージ」と「ハウスリースバック」の違いについて見ていきましょう。
この記事の目次
リバースモーゲージとは
「リバースモーゲージ」については以前の記事で解説していますので、下記の記事をご覧になってみてください。
ハウスリースバックとは
「持ち家」を売却して売却代金を受け取った上で、その売却した家に家賃(リース料)を支払うことで住み続ける方法です。
例えば、住宅ローンによる毎月のローン返済が家計にとって負担が大きい時に、持ち家を売却してその売却代金でローンを完済します。
通常、その後の引越し先が賃貸であれば賃料を支払います。
しかし、ハウスリースバックであれば、引っ越さずにそのまま住み続けることが可能です。
持ち家を有効活用して資金調達をしつつ、その後も同じ家に住み続けることができる点は「リバースモーゲージ」も「ハウスリースバック」も同じです。
それでは、何が異なるのでしょうか?
ハウスリースバックとリバースモーゲージの違いを見てみましょう。
ハウスリースバックとリバースモーゲージの比較
ハウスリースバックとリバースモーゲージの違いを表でまとめてみました。
ハウスリースバック | リバースモーゲージ | |
取引形態 | 不動産売買 | 不動産担保融資 |
取扱業者 | 不動産業者 | 金融機関 |
現金の受け取り方法 | 一括受け取り | 金融機関によって異なるが、一括受け取りも可能 |
金融機関の ローン審査 | なし | あり |
年齢の審査 | 制限なし(20歳以上) | 55歳以上や60歳以上としている |
年収の審査 | なし (賃料を支払えるだけの継続収入があるのか?の審査は残る) | あり (年収120万円以上など、金融機関によって異なる) |
不動産の 査定・評価 | あり | あり |
不動産の 所有者 | 売却により他人に移る | 変更なし |
登記 | 不動産の所有権移転登記 (ローン残債があれば抵当権抹消登記も必要) | 抵当権設定登記 (根抵当権設定登記が一般的) (ローン残債があれば抵当権抹消登記も必要) |
税金 | 不動産譲渡所得税の可能性あり その他、上記の「登記」にかかる税金(登録免許税)あり | なし 上記の「登記」にかかる税金(登録免許税)はある |
費用 | 不動産売却時の仲介手数料 (仲介手数料不要のケースも) | 金融機関の事務手数料 (金融機関によって異なる。手数料0円~融資額の2.20%など) |
火災保険 | 所有者変更のため不要 (借家人賠償責任保険が新たに必要なケースも) | 引続き必要 (付保が融資の条件となるケースも) |
お金の使い道 | 自由 (売却で得た資金は自由に使える) | 制限あり (事業目的や投資目的は不可のケースが多い) |
対象物件 | 取扱う不動産業者によって異なる (工場や事務所・店舗でも可能な場合、店舗併用住宅は不可の場合など) | 一戸建て住居が中心 (マンションが可能な場合もある) |
家族の同居 | 制限なし (何人で暮らしても可) | 制限あり (同居できるのは配偶者との2名までなどのケースも) |
子息に財産として残す | 買い戻すことで可能 | ローン返済することで可能 |
今後の支出 | 家賃の支払い | 利息の支払い |
管理費と修繕積立金の支払い(マンションの場合) | なし (所有者が支払う) | あり (所有者なので支払う) |
固定資産税の支出 | なし (所有者が支払う) | あり (所有者なので支払う) |
将来的な家計支出の削減可能性 | 家賃なので主体的な減額は難しい | 繰り上げ返済をすることで、支払利息額は主体的に減額可能 |
資金調達後に住み続けられることは同じでも、結構違うものですね。
次は、ハウスリースバックのメリット・デメリットについて解説していきます。
ハウスリースバックのメリット・デメリット

ハウスリースバックのメリット
1. 早くまとまった現金を手にできる
不動産を売却して現金化することで、まとまった現金を手にできます。
専門の不動産業者が買い取る場合には買主を探す必要が無く、早期の現金化が可能になります。
2. 住み続けられる
不動産売却後も同じ家に住み続けられるので、お子さんのいるご家庭の場合、学区が変わる心配がありません。
また、不動産を売却しても引越しが不要な為、引っ越し費用や保証人が不要です。
3. 他人に知られずに済む
一般的に不動産の売買が行われた事実は公開されず、所有者が変わった事実はお隣さんには分かりません。
(法務局にて登記内容を閲覧すれば分かってしまいますが)
4. 固定資産税が不要
固定資産税や都市計画税は不動産の所有者が納税します。
ハウスリースバックは所有者が変わるため、住み続けていてもこれらの納税負担はありません。
5. 資金使途が問われない
不動産を売却して手にしたお金の使用方法を問われることはありません。
6. 将来的に買い戻すことも可能
一時的にまとまった資金が必要で売却してしまっても、将来的に資金に余裕がでたタイミングで自宅を買い戻せる可能性があることもメリットのひとつです。
ハウスリースバックのデメリット
1. 売却価格が周辺相場よりも安価となる可能性
あなたの自宅を購入する人は、投資もしくは事業として購入します。
将来的には転売することも想定しているため、一般的な不動産売却に比べて、売却価格が1割~3割など安くなる可能性があります。
2. 買戻しは可能だが、売却価格よりも高くなる可能性
不動産に限らず、商業の基本なので致し方ない面もあります。
あなたから購入した人は、仕入れ値よりも高く売ることでビジネスが成り立ちます。
また、買い取り業者は不動産を購入するために「人件費」や「不動産鑑定の費用」などの他、維持費として「固定資産税」や「火災保険料」も支払っています。
その為、買い取り価格と同額で、買戻しに応じていたらマイナスになってしまいます。
「買戻し価格」は手放した時の売却価格の1割~3割など高くなる可能性があります。
3. 毎月のリース料(家賃)が周辺相場よりも高くなる可能性①
その家を借りたいのはあなただけ、あなたは何としても借りたい。
その分、家賃に跳ね返る可能性は否定できません。
4. 毎月のリース料(家賃)が周辺相場よりも高くなる可能性②
売却する家に住宅ローンが残っていれば、そのローン額を上回る価格で売却する必要があります。
また、まとまった現金が欲しくて自宅を売るので高額で売却できた方がうれしいですが、高く売れるほど今後住み続ける賃料(リース料)が高くなってしまうという、悩ましい事態が待っています。
あなたの家を買う人は、自分で住むためではなく、投資(事業)として利益を目的に購入するわけです。
投資に使う金額から得られる利益が注目ポイント。
賃料(リース料)は次のように計算されます。
【 賃料 = 売買価格 × 期待利回り ÷ 12か月 】
例えば、「1000万円で売れた場合」「2000万円で売れた場合」「3000万円で売れた場合」に、投資家が設定する利回りが下記の場合の賃料は次のようになります。
【賃料(リース料)】

このように、賃料が高くなってしまうケースの場合、家計の固定費を下げたい人の場合、リバースモーゲージの方が有効と言えますね。
5. あなたの家ではなくなる
所有者が変わるという事は、あなたの家ではなくなります。
明日からは、新たな所有者のルールに従って住む必要があります。
例えば「室内でタバコが吸えなくなる」などの条件が付く可能性はあります。
6. 定期借家契約のケースが多い
定期借家契約とは、簡単に言うと借りて住める期間に上限(2年や3年等)が設けられた契約です。
この定められた期間経過後は次のいずれかを選択するようです。
- 家賃を支払って住み続けられる
- 契約の更新はなく退去を求められる
- 買い戻しをして、もう一度所有者になる
「持ち家」を有効に活用して資金調達をしたうえで、その後も住み続けられること点では、ハウスリースバックとリバースモーゲージは同じでも、それぞれに特徴があります。
ご自身の条件に合致する方をうまく活用していきましょう。
リバースモーゲージとリースバックにはそれぞれメリット・デメリットがあるんですね。
しっかり考えて選ばないと後々後悔することもあるかもしれませんね。
はい。
その場の資金調達の事だけでなく、その後のライフプランをシミュレーションして選ぶ事が大切です。
ご不安な方はファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをオススメいたします。